【研究論文】「社会的養護に内在する喪失とそれに伴う悲嘆についての包括的理解と支援に関する理論的検討」

社会的養護に内在する喪失とそれに伴う悲嘆についての包括的理解と支援に関する理論的検討」というテーマで紀要論文を書きました。

以下,要約です。


里親家庭や児童養護施設など、社会的養護下で暮らす子どもたちはその過程で多くの喪失を経験する。しかし彼らが経験する非死性の喪失は死を伴う喪失に比べて軽視される傾向にあるために、あるいは喪失よりも保護されたことに注目が集まるために、彼らが経験する喪失は十分にケアされず、それに伴う悲嘆は「権利を奪われた悲嘆」として内在化することになる。こうした喪失や悲嘆は問題行動として表面化する場合もあり、適切なケアが必要である。しかし社会的養護では、子どもだけではなく代替養育者も多くの喪失を経験いるにもかかわらず、彼らの喪失もないものにされ、権利を奪われた悲嘆が経験されているため、代替養育者が十分に子どもの喪失をケアすることができない状態にある。本稿ではこうした社会的養護に内在する喪失や悲嘆を包括的に理解し、支援していくために必要な視点について理論的に検討した。