全国私立保育所連盟について


全国私立保育所連盟


毎年2回開催されている全国私立保育所連盟の保育カウンセラー講座に講師として呼んでいただいています。
研修はステップ1からステップ3まであり,さらにそのあとにはステップアップコースも準備されている,なかなか手厚い研修です。現場である程度の経験を積んだ方たちが参加されるので,研修をやる方もいろいろな経験に語り掛けることができる分,面白いなぁと感じます(保育カウンセラー養成講座についてはこちら)。

そんなお付き合いもあって,毎月,全国私立保育所連盟からはお便りが送られてきます。『保育通信』という冊子です。
今日,今月号が手元に届いたので,拝見していると東京大学の遠藤俊彦先生の記事がありました。
『乳幼児期の教育について考える』という記事でした。Attachment研究で有名な遠藤先生は九州大学で教鞭をとられていたということもあり,また今は東大にいらっしゃるので静岡にも近いということで,何度か研修で静岡に来ていただきました。九州経験者ということで,お酒も飲まれるので,研修会そのものよりも,飲み会の時にいろいろなことを教わるという贅沢な時間を過ごしてきました。

遠藤先生はその記事の中で「非認知的な心の力」という概念を紹介しています。
ノーベル経済学賞を受賞したヘックマンはIQのような「認知的な心の力(認知的能力)」よりも,「非認知的な心の力(Non-cognitive Ability)」の方が成人期の適応や幸福状態に影響を与えていることを指摘し,乳幼児教育の重要性を強調しました。


(『幼児教育の経済学』ジェームズ・J・ヘックマン (著), 古草 秀子 (翻訳))

そして,発達心理学者から見た「非認知的な心の力」を自己や社会性に関わる力と説明し,Attachmentにはそうした力の発達を下支えする機能が含まれているということを紹介してくださっています。

結びの章には『何気なくやってしまっていることの教育的意味を見直そう』という題名をつけられています。保育という実践の中で,日々,当たり前,常識的な感覚の中で実践していることの中にこそ,乳幼児の教育において重要なものが含まれている。保育に携わる人はそうした意識をもっと強く持つ必要がある,ということです。
この点,私も強く共感します。学校教育でも,心理臨床家の教育でも,形あるもの,プログラムに対する信奉はとても強い。確かにプログラムやスキルは目に見えやすく,わかりやすいし,評価しやすいので,学んだ気になりやすいと思います。しかし,そうしたものの土台になる実践というのはもっともっと日々の実践の中に,まるで土に水がしみわたるように,浸透していくものなのだと思います。でも,空気や水のような当たり前の存在だからこそ,日々意識することも難しいし,研究として焦点を当てていくことも難しいな,と思います。

そんなわけで,今日は何を書きたかったかというと,全国私立保育所連盟のご紹介と,保育カウンセラー講座,良ければご参加くださいというご案内でした。

ide LAB.

北海道大学大学院 教育学研究院 臨床心理学講座 福祉臨床心理学研究室