キャリア・カウンセリング・プログラム(CCP)とライフ・ストーリー・ワーク(LSW)

新しい一年が始まりました。
本年もよろしくお願いします。

昨年末,日本子どもの虐待防止学会(JaSPCAN)の雑誌『子どもの虐待とネグレクト』にいつも一緒にキャリア・カウンセリング・プログラム(CCP)に取り組んでいる児童養護施設の片山さんの原稿が掲載されました。
『子どもの虐待とネグレクト』18巻3号では「人生史と虐待」という特集が組まれ,その中に『児童養護施設で人生を扱う実践の可能性 -親への支援と,子どもの未来への支援』という原稿を書かれたのですが,その中でCCPの実践についても触れていただきました。



CCPの開発を始めた当初はLSWとの関連など全く考えておらず,「施設で暮らす子どもの自立支援がもっとスムーズに進むように」「将来的な展望が描けるように」ということを考えて取り組み始めました。ところが当然,そうした取り組みをしていると,過去の体験がどれくらい整理されているか,過去に対する時間的な展望がどのようなものかが,将来の時間的展望に影響を与えるよなぁということに体験的に気づいてきました。当たり前といえば当たり前のことですが,自分のこれまでを肯定的に捉えられていれば,自分のこれからも肯定的に捉えられるよ,ということですね。そう考えてみると,LSWというのはその子の「これまで」を整理する作業,まさに人生史を編纂する,自分にとってのナラティブを構築していく作業だと思います。その作業ができていると,CCPでこれからの人生を考えることがよりよくできるということになるのですね。ところが,CCPをやっていて感じたことは,必ずしも「LSWをやって過去の整理ができた→CCPで将来の展望を考えることができる」という流れだけではなく,CCPに取り組み,将来のことについて考えてみようという準備が整ってくると,過去の自分の体験の整理にも取り組んでみようという動きが出てくることもあるということでした。
長くLSWに取り組んでこられた片山さんがこのあたりのことに気づいてくれて私に教えてくれました。

LSWは社会的養護を要する子ども,虐待を経験した子どもなど育ちにいろいろな問題,課題を抱える子どもの育ちを支える関わりとして近年,とても注目されているアプローチ(というより,個人的には周囲のおとなの姿勢だと思うのですが…)です。自分が取り組んできたことが,こうしてLSWと関連付けて考えられるようになったことに驚きを感じるとともに,もう少しいろいろな視点からCCPという取り組みを育ててみたいなと思いました。

「一年の計は元旦にあり」と言いますので,とりあえず今年の目標の1つにここまで取り組んできたCCPを本にすることに取り組んでみたいなと思っています。おそらくワークブックのような形になると思いますが,少し理論的な背景の部分やLSWとの関連にも触れながらまとめられればいいなと思います。

LSWに関しては楢原さんの書かれた『子ども虐待と治療的養育―児童養護施設におけるライフストーリーワークの展開』(金剛出版)という本がおすすめです。
今回の『子どもの虐待とネグレクト』の特集にも楢原さんの原稿が掲載されています。




なお,このCCPの開発に取り組むにあたり,「第43回(平成24年度)三菱財団社会福祉事業・研究助成」の助成を頂きました。
改めて助成して頂いたことに感謝です。
→三菱財団のHPはこちら

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北海道大学大学院 教育学研究院 臨床心理学講座 福祉臨床心理学研究室