フィリップ・ジンバルドー博士の時間的展望療法とCCP

スタンフォード監獄実験で有名なフィリップ・ジンバルドー博士。
ビデオ教材も多く出しているので,大学で一度は目にしたことがある人もいるかもしれません。

時間的展望の研究でも著名なジンバルドー博士は,PTSDの治療において,過去と向き合うだけではなく,現在や未来との付き合い方に目を向けることを提唱しています。

『The Time Cure: Overcoming PTSD with the New Psychology of Time Perspective』



ジンバルドー博士は,PTSDの治療に対する認知行動療法の効果を認めながらも,暴露療法のようなアプローチはトラウマ記憶と直面させることになるので,クライエントが日常生活でフラッシュバックを経験したり,悪夢にうなされたりするようになるというリスクを指摘しています。そこで,過去ばかりを扱うのではなく,未来や現在に目を向けることを推奨しているのです。イメージとしては,シーソーの片側にトラウマ記憶(過去の否定的な記憶)が乗っているが,それだけの時にはそちら側だけが重たく,引きずられてしまうので,その反対側に乗せる現在や未来についての肯定的な展望を育み,バランスが取れるようになることを治療として進めるということを提唱しているという感じでしょうか。

なんだ。
児童養護施設でのキャリア・カウンセリングで想定していることと同じようなことを言っているじゃないか。
さすが,ジンバルドー先生。
というか,臨床を重ねて見えてきたことが研究をベースとして見いだされてきたことと重なりあう部分が多くてびっくり。

ちなみに,記憶とPTSDの関係については神奈川大学の杉山先生たちが書かれた『記憶心理学と臨床心理学のコラボレーション』という本の中でも紹介されています。こちらはまたの機会にレビューしてみます。




→ジンバルドー博士の「The psychology of time」TEDの映像(https://www.ted.com/talks/philip_zimbardo_prescribes_a_healthy_take_on_time