【授業・ゼミ】2021年度 ゼミの活動報告

今年度の後期授業期間も終わりが近づいてきました。

福祉臨床心理学ゼミにはまだ院生はいませんので,ゼミは学部の2,3年生だけでやってきました。後期のゼミにはまだ所属ゼミを決めていない2年生も参加してくれることもあって,総勢20名ほどで毎週,ゼミの時間を持ってきました。


今回,講読する文献に選んだのは『日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション ―人種、ジェンダー、性的指向:マイノリティに向けられる無意識の差別』(明石書店)でした。学部のゼミで読むには少し難しいというか,マニアックかな…という思いもあって夏休み頃に迷っていた時,ひとりの学生が「読んでみたいと思っていた」と言ってくれたこともあってみんなで読んでみようということになった1冊でした。

私としては対人援助の仕事や研究に関わることになる学生たちには,単に知識だけではなく,この本をみんなで読み,ディスカッションすることによって自分の中にあるマイクロアグレッション,すなわち価値観や心の動きに目を向けることの大切さ,大変さを感じてほしいなというねらいもありました。


読み進めてみると,人種問題の話題が多いこともあり,なかなかピンとこないところもありましたが,ディスカッションの中で日本の状況に置き換えると… 身近にはどんな問題があるかな… とみんなで話し合いを進めることで理解が助けられたところが多くありました。


最後の授業の際に「この本,どうだった?」と学生たちに感想を求めると,「面白かった」「勉強になった」という声が多かったのには正直驚きました。あと,「この本を読んだことで自分の言動にとても目を向けるようになった」「身動きが取れなくなった感じがした」というような感想も少なくなかったのはねらい通りだった中と思いました(というより,考えていたよりも効果的だった)。


「問題」をクライエントの内面に限定して考えるのではなく,環境とか,文脈とかもう少し広い視点で考えること,また援助者としての自分自身の姿勢に目を向けること。特に社会的排除を経験しているクライエントに関わろうとするときにはそうしたことがとても大切になると思います。


私自身としては,ひとりでは最後まで読み切れたかな…と思うけど,学生の工夫した発表や説明,ディスカッションの論点の準備などのおかげで最後まで読むことができ,研究や教育活動を行っていく上でのヒントをたくさんもらいました。あとやっぱり学生の学ぶ力ってすごいなぁと思いました。


あとは,今年度は児童相談所の話を聞く会(もともとはフィールドワークに出かける予定だったのが感染拡大で出前講義形式に…)と卒論構想の検討会などの時間を持つ予定です。