施設の子どもへのキャリア・カウンセリング・プログラム

新年度が始まりました。
また一年,いろいろなことに取り組んでいきたいと思います。



数年前から児童養護施設で暮らす子どもたちの自立の問題に取り組んでいます。
最初におこなったのは,施設で暮らす子どもたちが未来をどのように捉えているのだろうか,という研究でした。

「時間的展望」という概念があります。
これは人が現在,過去,未来といった様々な時間をどのように捉え,どのような価値を感じているかというようなことを含む概念です。

施設で暮らしている子どもたちは,家庭で暮らしている子どもたちに比べて,肯定的な将来を思い描くことができにくいことや,そもそも,将来の展望を持ちたいという気持ちを持てていないということがわかりました。
つまり,彼らは「おとなになりたい」とは思えていない,ということです。

しかし,彼らがおかれている状況は深刻で,18歳(高校を卒業したら)になったら否応なしに自立し,施設から巣立っていかなければなりません。そこで,彼らに対して生活スキルや社会的スキルを身に着けさせるためのトレーニングが行われてきました。
でも,そもそも「おとなになりたい」と思えていない子どもたちにそうしたトレーニングをしてもなかなか身に着くものではありません。「勉強したい」と思っていない人に無理やり勉強させるようなものです。


そこで,施設の方たちと協力して,子どもたち自身が「おとなになってみたいな」「将来のことについて考えてみたいな」と思えるような時間を作ろうということに取り組んできました。それが,施設の子どもへのキャリア・カウンセリング・プログラムです。2年間,ある施設の職員さんたちと作り上げてきたプログラムですが,今年度から新たに2つの施設でこの取り組みを行うことになりました。
*キャリア・カウンセリング・プログラムに関する報告書〈http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/handle/10297/7989〉(第43回三菱財団社会福祉事業・研究助成)


施設は家庭と同じで,それぞれが個性的な存在です。
ある施設でよかったものが,別の施設でもいいものである保証はありません。
また施設の先生たちといろいろと話をしながら子どもたちにとって良い時間を提供していければと思います。



井出研究室HPへのLINK

ide LAB.

北海道大学大学院 教育学研究院 臨床心理学講座 福祉臨床心理学研究室