映画で学ぶ心理学 『my girl』

講義の中で映画を通して人の心の移ろいを説明することがあります。
昔の映画が多いので,最近の学生たちに話をしても「???」という顔をすることがありますが...

そんな中でよく紹介する映画で,個人的にも大好きな映画に『my girl』と『my girl 2』という作品があります。





この作品は,ある女の子,ベーダの児童期から青年期にかけての発達過程をとてもよく描いています。
ベーダは自分が生まれる時に母親を亡くしています。そのことが後の女性性の獲得に大きな影響を与えます。

ベーダの父親の仕事は葬儀屋です。家で葬儀をすることもあり,自宅には遺体が運び込まれます。人の死に対して恐怖心を持つベーダは遺体を見ることも,遺体が安置されている部屋に近づくこともできません。父親もそうしたベータの気持ちに気付きながら,何もすることなく,ベーダは思春期の入口に差し掛かります。ベーダが初潮を迎える頃,父親に恋人ができます。ベーダはその女性に嫌悪感を抱きながらも,その女性から大人の女性になっていくことについて教えてもらうことになります。「自分は病気なんじゃないか?」「異常なんじゃないか?」という不安を抱く様子は思春期に入っていくこの年代の子どもの心の動きをよく描いていると思います。

続編の『my girl 2』ではもう少し成長したベーダの姿が見られます。
思春期の終わりに差し掛かり,いよいよ自分探し(アイデンティティの確立)の課題にベーダは直面します。
そこでベーダがとった行動は母親が結婚する前住んでいた町を訪ね,母親がどのような人だったのかを知ろうとすることでした。
父親の新しい奥さんと同一化しながらも,やはり母親と同一化したいと思いながら母の足跡を訪ね,若いころの母親を知るいろいろな人たちに母親のことを聞いて回ります。母親がどのように生きてきたのか,自分はどうして生まれてきたのかということに触れ,ベーダは女性として,人として大人に向かっていきます。

映画作品としてもとても面白い,いい作品だと思います。
一方で,児童期から青年期にかけての発達課題とそれに直面する苦悩を理解する,トラウマがどのように人生に影響するかを理解するために多くの学びを与えてくれる映画だと思います。
秋の夜長に,ぜひ見てみてください。

ide LAB.

北海道大学大学院 教育学研究院 臨床心理学講座 福祉臨床心理学研究室