学生相談学会研修会

先日,学生相談学会の研修がありました。
今回のテーマは『学生相談におけるセクシャルマイノリティ』でした。



話題提供をしてくださったのは,長年,学生相談の領域でセクマイの学生さんの支援に関わってこられた高石先生と,日本の性同一性障害(性別違和)診断の第一人者である針間先生,慶応大学の顧問弁護士の宗像先生の3人でした。それぞれにとても興味深いお話を聞かせてくださいました。

針間先生のお話は一度聞いてみたいと思っていました。
どんな風にして診断をされるのかという話や性別違和を感じている方と他の精神疾患や発達障害との関連など,日ごろ疑問に思っていることについても触れていただけたので腑に落ちました。
弁護士の宗像先生のお話は,臨床心理の考え方からすると割り切れない想いもありましたが,法律や社会システムという視点からみると,「そうなんだよなぁ」と感じる内容でした。大学を経営する立場からすると,個々の学生のニーズに応えることも大切だけれど,他の人(マジョリティと呼ばれる人)が負担するコスト,決まり事などとの関係に土江も考えなければならないというのは納得がいきました。

2日目はいろんな大学の学生支援に関わる方たちとディスカッションでしたが,個々の大学の事情や状況に触れることができました。それぞれの大学で目の前の学生に何ができるかということを少しずつ考え,取り組みが始まっているところなんだぁと思いました。
社会に新しい価値観が取り入れられていくとき, 無視→承認→受容… というプロセスを踏む,という話がありましたが,今は無視から承認に進んできた段階なのだというのが参加していた方たちが感じていることのようでした。受容の段階になるためには,社会全体がコストを負担することを受け入れる,ということのようなので,受容,というところに進むためにはもう少し時間が必要なのだと思います。

いつも思いますが,セクシャルマイノリティのテーマについて考えていると,結局は社会的養護などの他のマイノリティのこととも共通するテーマに行きつきます。

いつだったか,先輩の先生と話しているときに「戦う臨床心理士にはなりたくない」と話をしたことがありますが,その時,その方は「僕はそう思わないよ。臨床で学んだことを社会システムにしていくためにはそういうことも必要だよ」とおっしゃっていました(たぶん。酔っぱらっていたのであいまい)。
剣をもって戦おうという気持ちにはならないけれど,いろいろな人の声を整理して伝えていくことも必要なのだなと思いました。

ide LAB.

北海道大学大学院 教育学研究院 臨床心理学講座 福祉臨床心理学研究室