【研究論文】「成人前期の児童養護施設出身者におけるレジリエンスの保護・促進要因の探索」

児童養護施設で暮らした経験を持つ若者の中で,成功的な社会適応を遂げているレジリエントを隊長としたインタビュー調査を行い,彼らにとってのレジリエンスの保護・促進要因を明らかにした研究「成人前期の児童養護施設出身者におけるレジリエンスの保護・促進要因の探索 ―レジリエントへのインタビュー調査を通して」が『子どもの虐待とネグレクト』21(2)に資料論文として掲載されました。




この研究は昨年度の子ども虐待防止学会で口頭発表をしたもので,当日,座長を務めていただいた先生方からのご推薦を受けて雑誌に投稿させていただいたものです。
資料論文なので,本文には要旨がありませんが,執筆の過程で書いた要旨をご紹介します。

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多面的な基準に基づいてレジリエントと評価された児童養護施設での生活を経験した成人前期の若者(RY)を対象とした半構造化面接(N=7)を行い,レジリエンスの保護・促進要因を探索した。KJ法を用いた分析の結果,71ヶ所の保護・促進要因に該当する記述が抽出され,それらは6つの大カテゴリー,27のカテゴリーに分類された。施設で暮らしている間は境遇を共有できる仲間や職員といった【施設生活の中の資源】や,学校の教員や友人など【施設生活を支えた人の存在】が保護・促進要因となり,退所後には恋人やパートナー,大学等で出会った仲間など【卒園後の生活を支えた人の存在】が保護・促進要因となっていた。こうした多くの人との関わりの中で保護者や施設職員,他の児童を【反面教師として見る視点】が培われ,それをもとに将来の目標や展望を持つことも保護・促進要因となっていた。さらに,集団生活である【施設生活で獲得した力】など,レジリエントが持つ【個人の特性】なども保護・促進要因となっていた。こうした知見をもとに,レジリエンスの育成という視点から施設で求められる支援が提案された。

ide LAB.

北海道大学大学院 教育学研究院 臨床心理学講座 福祉臨床心理学研究室